民泊と管理組合


<マンションにおける民泊問題>

 住宅宿泊事業法が平成30年6月15日施行されたことに伴い、マンション管理組合は、民泊を受け入れるか否かを総会に諮り、決議することを国土交通省は求めています。平成30年3月15日から住宅宿泊事業者の届け出がスタートしました。規約の改正または管理組合としての意志決定が望まれています。

  空き部屋の有効活用として組合員(区分所有者)が民泊管理業者に委託するだけで手軽に民泊は始められます。

 闇民泊を防ぐ事によってトラブルを防ぎましょう。法律に則した民泊を取り入れるのか、民泊は禁止するのか、住民で話し合って管理組合としての結論を出す必要があります。 



民泊と管理組合(資料編)

1.民泊とは

民泊とは、個人が所有する住宅の一部や別宅、マンションの空き室などに旅行者を有料で宿泊させることです。

もともとは民家に宿泊することを意味することばで、英語のホームステイhome stayと同義に用いられてきました。

(1)民泊サービス

 2010年(平成22)ごろからインターネットを通じて宿泊者を募集し、一般住宅などに宿泊させるサービスが世界的に拡大したことを背景として、日本では、こうした寝泊まりのできる場所そのものや、宿泊する行為、また、宿泊を仲介するウェブサービスをさす呼称として、民泊ということばが使われ始めました。

 代表的な民泊サービス

  Airbnb (エアビーアンドビー) :サンフランシスコ 

  HomeAway (ホームアウェイ) :シンガポール

  FlipKey (フリップキー) :ボストン

 これらは、おもに個人(貸し手、ホスト)の賃貸物件を、旅行者(借り手、ゲスト)がインターネットを利用して予約し、民泊サービス会社に対して宿泊代を支払います。ホストは訪ねてきたゲストにインターネットの情報で提示しているサービスを提供し、民泊サービス会社から料金を受け取る仕組みになっています。

(2) 特区民泊とは

 現行の日本の法律では、原則として宿泊期間が1ヶ月未満の施設では旅館業法が適用され、フロント設置、宿泊者名簿の作成義務、衛生管理、保健所による立入検査など様々な義務が課されます。

 しかし、国家戦略特別区域法第13条では、下記のように定められています。

国家戦略特別区域会議が、国家戦略特区法の特定事業を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、当該認定の日以後は、国家戦略特区法の特定事業を行おうとする者は、その事業について都道府県知事の特定認定を受けることにより、その事業には、旅館業法の規定は適用されない。

 具体的には、「国家戦略特区において外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき条例で定めた期間(3日~10日)以上使用させ、滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当するもの」については、旅館業法の適用除外となります。

  

2.住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

 民泊新法は、ホテルや旅館など、これまでも存在した旅館業法に基づく宿泊施設ではなく、住宅での宿泊事業を規定するための新しい法律です。

 

(1) なぜ民泊新法が作られたのか

ア.観光客の増加

 近年、急激に訪日外国人観光客が増えて、人気の観光地や首都圏では宿泊施設の不足が見られるようになりました。ホテルや旅館など既存の宿泊施設だけでは、訪日外国人観光客のニーズに対応しきれなくなっていたのです。そこで台頭してきたのが「民泊」でした。

表1.訪日外国人消費額と訪日外国人旅行者数 (観光庁 H29.3.31報道発表)

 

 

 表2.訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向 (観光庁 H29.11.15報道発表)

 

イ.旅館業法の壁

 ところが日本には、宿泊施設が安全で快適な滞在を提供するための「旅館業法」があり、宿泊施設にはこの業法が適応されなくてはいけないという決まりがあります。

しかし、一般の住宅で宿泊事業を行う民泊にとって、旅館業法の厳しい規定を満たすことは困難なものでした。

 ウ.現実的な法規制

 そのため無許可で民泊営業をする施設が続出し、トラブルも増加。

 しかしそれを規制する法律もないので、訴訟沙汰になっても明確な規定はなく、民泊という新たな宿泊形態に対応するために、現実的な法規制が求められていました。

 図1.宿泊事業体系のイメージ

 

(2)  民泊新法が適用される条件

「旅館業以外の人が住宅に人を宿泊させる行為」で「行為が年間180日を越えないもの」が民泊新法の適応条件とされています。

ここでいう住宅とは、「家屋の中に台所、浴室、便所、洗面設備等の設備」があり「実際に人の生活拠点として使われているところ」または「民泊利用の前後に人に貸し出している家屋」と定義されます。

 

(3)  民泊新法の対象者

民泊新法が定義する対象者は下記の3者です。

ア.住宅宿泊事業を運営する事業者

  年間180日を超えない範囲で、住宅に人を宿泊させる事業者のこと。民泊のホストがこれにあたります。

イ.住宅宿泊管理業者

  住宅宿泊事業者から委託を受けて、住宅宿泊の維持管理をする事業者のこと。家主不在型の場合は管理業者による管理が必要です。

ウ.住宅宿泊仲介事業者

  届け出をして許可された住宅に泊まりたい人と、住宅宿泊事業を運営する人を仲介して契約の媒介をする人。

 

 4)  住宅宿泊事業に係る届出制度の創設

ア.住宅宿泊事業を営もうとする場合、都道府県知事への届出が必要

イ・年間提供日数の上限は180日

ウ.地域事情を反映する仕組み(条例による実施の制限)を導入

エ.宿泊者の衛生の確保の措置等を義務付け

オ.家主不在型の事業者に対し、住宅宿泊管理業者への管理委託を義務付け

 

(5)  住宅宿泊管理業に係る登録制度の創設

ア.住宅宿泊管理業を営もうとする場合、国土交通大臣の登録が必要

イ.住宅宿泊管理業の適正な遂行のため家主不在型の代行を義務付け

 

(6)  住宅宿泊仲介業に係る登録制度の創設

ア.住宅宿泊仲介業を営もうとする場合、観光庁長官の登録が必要

イ.住宅宿泊仲介業の適正な遂行のための措置(宿泊者への契約内容の説明等)を義務付け

 

(7)  住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行時期

2017年 3月10日 閣議決定

2017年 6月 1日 衆院可決

2017年 6月 9日 参院可決

2017年 6月16日 公布

2017年10月27日 (住宅宿泊事業法施行規則公布)

(国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則公布)

(厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則公布)

2018年 3月15日 事業の届出開始

2018年 6月15日 施行 

3.民泊を許容するか否かの方針決定

 (1)  平成30年3月15日から民泊事業の受付が開始されました。

⇒ 民泊サービス事業者から提出された届出書の受付時、管理規約等において民泊サービスが禁止されていないことのチェックが行われます。

(別紙1受付処理フロー参照)

ア.管理規約に民泊サービス禁止の規定がなく、理事会や総会で禁止の議決もない場合は、禁止する意思がないとして「届出書」が受理されます。

(住宅宿泊事業法施行規則第4条4項関連)

イ.一旦受理されますと、その後の規約改正による民泊サービス規制が出来なくなる恐れがあります。

(標準管理規約47条7項関連)

  

(2)  管理組合が早急に取組むこと

⇒ 民泊サービスを許容するか否かの方針を明確にしておく。

ア.管理規約を改正し、専有部分の用法の条項に民泊サービスを許容するか否かの条文を追加してください。(管理規約の改正参照)

イ.管理規約の改正が間に合わない場合は、理事会または総会において民泊サービスを許容するか否かの方針を決議し、その議事録を作成しておいてください。

事業者から届出があったときに管理組合としての方針を確認する証拠書類となります。

 

別紙1  

      住宅宿泊事業に係る「届出書」の受付処理フロー

 

4.管理規約の改正

 住宅宿泊事業法(民泊新法)公布に伴う管理規約の改正(案)は以下のとおりです。

  

(1)  住宅宿泊事業(民泊)を可能とする場合の規約改正例

標準管理規約)

 民泊を許容する場合は第12条に2項を追加する。

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第4章 用法 

 (専有部分の用途)  

 第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。 

2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

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(2)  住宅宿泊事業(民泊)を禁止する場合の規約改正例

(標準管理規約)

 民泊を禁止する場合は第12条1項だけでは住宅宿泊事業の可否を解釈することは難しいため、トラブル防止のために2項を追加することが望ましい。

更に、広告掲載・募集・勧奨を禁止する3項を追加することも可能。

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第4章 用法 

 (専有部分の用途)  

 第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。 

2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

3 区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集または勧奨を行ってはならない。

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参考

住宅宿泊事業法第2条第3項 ------------------------------

(定義)

第二条 

1~2 略

3 この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。

4~10 略

 

住宅宿泊事業法第3条第1項 ------------------------------

(届出)

第三条 都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区(以下「保健所設置市等」という。)であって、その長が第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理するものの区域にあっては、当該保健所設置市等の長。第七項並びに同条第一項及び第二項を除き、以下同じ。)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。

2~7 略

 

住宅宿泊事業法施行規則 (H29.10.27公布) --------------------

(届出)

第四条4項 法第三条第三項の国土交通省令・厚生労働省令で定める書類は、次に掲げるものとする。

 一 届出者が法人である場合においては、次にげる書類

  ル 住宅がある建物が二以上の区分所有者が存する掲建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものである場合においては、専有部分の用途に関する規約の写し

 

標準管理規約 (H29.8.29改定) ------------------------------

(総会の会議及び議事)

第47条

7 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権 利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。こ の場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはな らない。

  

参考

民泊の教科書 https://minpaku.yokozeki.net/about-minpaku/


<説明資料>

各管理組合での説明用資料は、会員ページでダウンロードできます。

<厚労省の説明資料>

(財)マンション管理センター主催のセミナーテキスト

http://www.mankan.or.jp/01_seminar/pdf/20171030minpaku.pdf